エネルギッシュな語り口からは、現場に対する並々ならぬ愛着と、未来の市場を見据える熱意が伝わってくる。営業本部で海外営業を担当する鷲見太乙さんは、南アジアや中東などの新興国市場において、製品のローカライズや販売戦略の立案に奔走している。
営業という枠を越えて、開発チームとともに製品そのものの在り方に関わる姿勢は、まさに“事業をつくる”感覚だ。
バレエの舞台から、世界を駆ける営業へ
実は彼、かつてはバレエダンサーとして舞台に立っていたという異色の経歴の持ち主。
「ダンスで得た感性は、いまの営業にも活きている気がします。目の前の相手をどう魅了し、どう伝えるかは、舞台も営業も同じですから」と笑う。
人生の転機は21歳。怪我をきっかけにダンサーを引退し、ヨーロッパへ渡った。現地での経験を通じて、語学力が自分の強みになると気づいたという。「世界を舞台に働く」という目標を掲げ、帰国後は日系メーカーで海外営業を志した。
タジマ工業に入社したのは、「日本の技術を世界に届けたい」という想いと、刺繍というプロダクトの奥深さに惹かれたからだと語る。
「刺繍って 単なるローテクじゃないんです。人の感性や手の温もりが活きる、アナログだからこその豊かさがある。そこに魅力を感じました。」


南アジア市場で、現場に深く入り込む。
現在担当しているのは、インドやバングラデシュ、UAEなどの南アジア・中東エリア。
縫製産業が盛んで刺繍機へのニーズが高く、多様性と競争が共存するダイナミックなマーケットだ。
特に印象に残っているのは、インド最大級の代理店との新規取引を任されたときのこと。「現地の大手縫製企業や刺繍工場の経営層、約130名を前に英語でプレゼンしました。現場で“自分の言葉で”伝えたことが信頼につながり、最終的に成約に至ったときの達成感は格別でした。」と振り返る。
現地の空気を感じること、実際に“目で見て、耳で聞く”ことを何より大切にしているのが、鷲見さんのスタイル。
「文化も価値観も違う中で、机上の戦略だけじゃ現場は動かない。お客様のリアルを体感することが、すべての起点になると思っています」


最近では、インド市場向けに、現地のニーズや使用環境を踏まえた仕様検討を行うなど、販売活動にとどまらず、開発と一体となって市場価値を高める取り組みを推進している。こうした“二人三脚”の姿勢が評価され、社内でMVPにも選出された。
「挑戦する人をきちんと見てくれている会社だと感じました。自分の提案が形になり、評価につながるのは純粋に嬉しいですね」
アジア市場に広がる、刺繍の新しい可能性。
“攻め”の姿勢で、新しい市場を切り拓く。
アジア市場では、今まさに刺繍のあり方そのものが変わりつつある。ロゴ刺繍だけでなく、装飾性や表現性の高いデザインが求められるようになり、それに伴って刺繍機にも、より高度な表現力が求められている。
そんな変化の時代だからこそ、タジマの技術力と“刺繍に宿る感性”が生きる――と鷲見さんは語る。
「どこか懐かしくて、でも新しい。刺繍には、そういう不思議な魅力があります。文化にも、心にも寄り添えるのが刺繍の力です」
学生時代に描いた「海外で働きたい」という夢は、今や現実のものとなった。しかし、そこで立ち止まることはない。
「これからも、まだ誰も踏み込んでいない市場や、刺繍の新しい使い方を探し続けたい。そして、刺繍の可能性をもっと世界に届けたいです」と意欲を見せる。
言葉の端々ににじむのは、“自分の仕事”として市場を切り拓いていく覚悟。
“攻め”の姿勢で現場を駆ける鷲見さんの挑戦は、これからも続いていく。

営業・企画部門 営業部 鷲見太乙
2018年入社
南アジア・中東を中心に、営業担当として販売戦略や製品ローカライズを推進。現場に深く入り込みながら、開発チームと連携して市場起点の製品づくりにも挑んでいる。元バレエダンサーという感性を活かし、刺繍の新しい価値を世界に発信している。
※本記事は2025年12月5日時点の情報をもとに作成しております。