― クルマと匠技が交わる、新たな体験価値の創造 ―
LEXUSのフラッグシップモデル「LC」。その特別仕様車“PINNACLE”には、タジマの刺繍技術が採用されました。
クルマという工業製品と、刺繍という文化的表現。
異なる領域が交わることで生まれたのは、これまでにない加飾の可能性と、モビリティの未来への新しい価値でした。

LEXUS LC500 / LC500 Convertible 特別仕様車“PINNACLE”に、タジマの刺繍技術を。

トヨタ自動車株式会社
レクサス統括部 製品企画ZL チーフエンジニア 武藤康史(左)
クルマ開発センター カラー&感性デザイン部 グループ長 岡本桃子(右)
クルマ開発センター カラー&感性デザイン部 加藤帝世(オンライン参加)

世界を牽引する日本の技が響き合う

2017年に登場したLCは、LEXUSを象徴する存在として進化を重ねてきました。
特別仕様車は、そのブランド思想を形にする「挑戦の場」。

PINNACLE”では、走行性能だけでなく、クラフトマンシップを通して感性に訴える価値を追求しました。
その新たな挑戦のひとつとして選ばれたのが、刺繍による加飾表現。
「日本の職人技をクルマの中で表現したい」──そうした想いから始まったプロジェクトだったと、開発を担当した武藤様は振り返ります。

タジマとの出会いのきっかけは、2022年頃。
「愛知に、世界で挑戦する面白い刺繍メーカーがある」との紹介を受け、LEXUSの企画メンバーがタジマを訪れたことから始まりました。武藤様はそのときの印象を「技術を武器に、ものづくりで世界と向き合う姿に共感した」と語ります。LEXUSとタジマの協業によって実現したのは、単なる加飾ではなく、工業と文化が共鳴し合う新たな表現。精度と情緒、革新と継承──その均衡の中に、両者が大切にしてきた日本の技が息づいています。

 

グラデーション刺繍で時間を織り込む

“PINNACLE”のテーマは「走りと美の調和」。
刺繍デザインモチーフには、山の稜線と雲間から差す光──“天使のはしご”が込められています。

デザインを担当した加藤様は、「自然の中にある一瞬の光を、クルマの中で感じられるかたちにしたかった」と話します。当初は具体的な風景を描くような試作も行われましたが、検討を重ねる中で、より抽象的で普遍的なデザインへと進化していきました。
糸の角度や光の反射を丁寧に設計し、見る角度や時間帯によって表情が移ろうように仕上げられています。助手席と運転席で異なる色の見え方を楽しめるこの刺繍は、LEXUSが掲げる「TIMEの哲学」を体現したもの。乗るたびに新しい発見がある“時を感じる体験”として、LCの世界観をより深く印象づけます。

 

デザインと品質を満たすための挑戦

クルマの内装に刺繍を採用するには、デザイン性だけでなく、極めて厳しい品質基準をクリアする必要がありました。
高速走行時の振動や温度差、長年の使用による摩耗──そのすべてに耐える表現が求められました。

構想段階から約2年、タジマでは糸の種類や縫い方向、密度を変えながら試作と評価を幾度も繰り返しました。最終的に完成までに製作されたサンプルは70枚以上。わずかな縫い目の角度やステッチの深さの違いで印象が変わるため、両社は綿密に意見を交わしながら微調整を重ねていきました。

「難しい課題ほど楽しそうに挑戦してくれる。その姿勢に信頼を感じました」と武藤様。
“できるまでやり抜く”というタジマの文化が、LEXUSが求めるクラフトマンシップと深く響き合いました。

 

WE INNOVATE TO PRESERVE. 加飾が示す思想の共鳴

LEXUSが掲げる「WE INNOVATE TO PRESERVE. (革新をもって、大切なものを守る)」という思想は、刺繍文化、そしてタジマグループのビジョンにも通じています。
数千年にわたり人々の暮らしを彩ってきた刺繍。その文化を次の時代へとつなぐために、タジマは常に技術革新を重ねてきました。

“PINNACLE”に乗り込むと、グラデーションで織り上げられた刺繍が光を受けてやわらかに浮かび上がります。それは単なる装飾ではなく、ドライバーや乗る人に「特別な体験価値」を添える存在です。クルマ開発センター カラー&感性デザイン部 グループ長の岡本様は「刺繍があることで、クルマに込められた想いや時間を肌で感じられる」と語ります。精緻な工業製品でありながら、そこに温もりが宿ることで、LCは“機能”から“体験”へ──モノからコトへと進化を遂げました。

 

MADE IN JAPANが切り拓く未来

自動車業界全体で高まりつつある「パーソナライゼーション」へのニーズに対し、刺繍は新たなソリューションとなる可能性を秘めています。
ラグジュアリーな空間は、単に豪華な装飾だけでは成立しません。
色や素材、仕上げといった要素の組み合わせを超え、いま求められているのは、五感に訴えかけるような“体験” をデザインする発想。
“PINNACLE”における刺繍の導入は、その象徴といえるでしょう。

日本が誇る技術と思想が重なり合うことで、モビリティは「移動の手段」から「文化を育む場」へと進化しました。
それは、LEXUSとタジマが共に描く未来を見据えた挑戦の一歩でもあります。

 


LC500 / LC500 Convertible 特別仕様車“PINNACLE”

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