コンパクト刺繍ミシン「SAI -彩- 」を使い、数多くの作品を通して独自の世界観を表現されているのが、刺繍作家のソライロ刺繍さんです。SAI -彩- を導入された理由や作品へのこだわりについて聞きました。 

「TAJIMA SAI -彩-は、頼れるパートナー」 刺繍でリアルを表現する、刺繍作家の仕事。 

ソライロ刺繍さん

ソライロ刺繍さん
大阪府在住の刺繍作家。金魚をモチーフにした作品を中心に、オリジナルの刺繍作品を制作する。2023年の「第16回AJCクリエイターズコンテスト」で銅賞「産経新聞社賞」を受賞するなど、刺繍の新しい可能性を追求した作品が高く評価されている。  

服飾の仕事を経て刺繍作家へ

大阪府、北摂エリアの閑静な住宅街に佇む、一軒の素敵な古民家。その2階から、小気味よい刺繍ミシンの音が聞こえてくる。ここは、刺繍作家・ソライロ刺繍さんのご自宅兼アトリエ。2階の1室が創作スペースとなっており、押し入れにすっぽりと「SAI -彩-」が収まっている。「SAI -彩-は、高さも奥行きも、押し入れにちょうどいいサイズなんです。見た目もおしゃれでとても気に入っています」。 

刺繍作家として活動する前は、20年ほど服飾の仕事をしてきたというソライロ刺繍さん。お子さんが幼稚園に入園する際、幼稚園バッグを手作りしたことをきっかけに刺繍に興味を持ったそうだ。その後、名古屋の刺繍工房で刺繍の基礎を学び、作家として本格的に活動を始めた。「多くの人がそうだと思うのですが、自分の考えたものが刺繍になるって、すごく感動するんです。『こういうものが出来上がるんだ!』という感じで。それがうれしくて刺繍にハマりました」と、当時を振り返る。 

ソライロ刺繍さんがその頃から制作してきたのが、金魚をモチーフにした作品である。作品をSNSに載せたところ、あるギャラリーから連絡があり、イベントへの出品依頼を受けた。イベントに向けて作品数を増やすことにしたソライロ刺繍さんは、このタイミングで刺繍ミシンを買い換えることを決める。「それまでは海外製の家庭用刺繍ミシンを使っていましたが、1本針だったので糸替えが大変で、多針のものに買い換えることにしました。彩を選んだ理由は、糸調子が最適だったからです。私はオーガンジーという薄い生地をよく使うのですが、糸調子のきついミシンではこの生地を縫うことができません。各メーカーのミシンを試す中で糸調子が理想的だったのが、彩でした」。 

「刺繍」を意識せず、幅広い表現を

SAI -彩-の導入とほぼ同時に使い始めたのが、タジマの刺繍データ作成ソフトDG16である。この判断も、ソライロ刺繍さんの制作に変化を与えたという。「以前使っていた他メーカーのソフトは初心者でも使いやすいものでしたが、一部設定が自動で行われるため細かい調整ができず、もの足りない部分もありました。一方、DG16はあらゆる設定を自分好みに調整できます。自動車で言うとマニュアル車を乗りこなす感じです。刺繍データ作成ソフトを変えたことで、作品のグレードがすごく上がりました」。 

代表作の一つである金魚の立体刺繍を見ると、ヒレや顔などの細部までリアルに表現されていて、今にも泳ぎ出しそうな躍動を感じる。また、2023年の「第16回AJCクリエイターズコンテスト」で銅賞「産経新聞社賞」を受賞した作品「十二月の庭~散り紅葉」では、紅葉の盛りが終わった頃の庭の風景を表現。紅葉の葉だけでなく、手水鉢の苔などの細かい部分もすべて刺繍で制作し、和の世界観を表した。「自分が見て感じた美しさを、そのまま表現することを意識しました。また、私は普段から刺繍の限界にとらわれず、自由な発想で制作することを大切にしています。この作品を作る時も、自分の中に『刺繍をしている』という意識はなかったかもしれません」。 

一方で、ソライロ刺繍さんが「これはやらない」と決めていることもある。それは、刺繍に後から色を塗ることだ。色を塗らず、あくまで刺繍糸だけでグラデーションを表現する。そのこだわりが作品を繊細なものにし、見た人に感動を与えるのである。 

繊細さと力強さが、SAI -彩-の魅力

以前使っていた海外製の刺繍ミシンはミシンと遜色ないほど多様な表現ができたが、使用頻度が高くなると故障も多かったそうだ。「繊細さは魅力でしたが、修理に出す手間がかかりました。彩はそういう繊細さを持ち合わせながら、とても丈夫で故障しにくいです。頼りになるパートナーだと思っています」。 

ソライロ刺繍さんは当初、販売を目的とした「商品」として作品をつくってきたが、ある頃から売り物という意識を持たずに制作することにした。「商品」ではなく、「作品」を作る。そう意識を変え、新しい表現方法を積極的に取り入れていったところ、作品のスケールが大きく広がったという。今までできなかったことにチャレンジする姿勢が、他にはない個性を生み出している。 

「私やっぱり、作品には自分の人間性が出ると思っていて。ただきれいなだけではなく、自分らしさや面白みを出したいと思っています」。自分が感じ取ったことを刺繍として表現する。その繊細な作業を行う上で、ミシンとの相性の良さが重要なのだとソライロ刺繍さんは言う。「SAI -彩-は、私が表現したいことをダイレクトに受け止めてくれます。手の感覚を頼りに『もうすこし押す』といった細かい調整をしたり、糸調子の加減を調整したりするのですが、その感覚は楽器に近いものだと思います。ピアノを弾いている感覚というか、『SAI -彩-と一緒に縫っている』という感じです」。 

技術を高め、よりリアリティのある作品をつくりたい。SAI -彩-を自在に使いこなして理想の表現を追求する、ソライロ刺繍さんの想いを知ることができた。